他の人のエントリに勝手に補足する。

これね。→ワーキングプアは見捨てられ、生活保護リテラシーの高い人間が受給できるという二重基準 - 分裂勘違い君劇場
僕のブコメがこれ。↓

2008年03月11日 nijuusannmiri 社会保障, 福祉, 社会, 世間 本当に困ってる時は共産・公明辺りの地方議員は使える。クーラーとか家電は貯金して買う分にはOKのはず。車は維持費と事故時の補償が問題。総じて内容としては当たってるかと。/ホームレスは施策のある大都市へ行け。

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ま、補足した方がいいと思ったことはなんとかブコメに押し込めたので、それでいいかとも考えたのですが、やはり、もう少しだけ書くことにします。

同じような境遇にありながら、生活保護費を受給できる・できないを分けるラインは、どこにあるのでしょう?



どうも、ここには次の二つの基準があるようなのです。

(1)甘い基準:生活保護法が定める基準

(2)厳しい基準:各自治体の生活保護運用基準


この(1)の法律基準はかなり甘いため、こちらを適用することができれば、かなり多くの人が受給資格を得られます。



一方で、(2)の運用基準はかなり厳しくなっていて、よっぽど生活が破綻している人でないとなかなか受給できません。

ワーキングプアは見捨てられ、生活保護リテラシーの高い人間が受給できるという二重基準 - 分裂勘違い君劇場

これは、たぶん、かなり実態に近いと思いますよ。
ただし、「各自治体の生活保護運用基準」の前に、国(厚生労働省)が定めた「実施要領」というものが存在していて、そちらには生活保護法よりは細かい基準*1が定められています。これは、たとえば『生活保護110番』というサイトのこちらのページ等で読めます*2
とはいえ、実際に運用するのは各自治体の社会福祉事務所なわけで、その地域ごとに運用の仕方が大きく異なる点があるのは、それは望ましいことではないけれど、現実として存在するようです。*3
fromdusktildawnさんは、それを踏まえた上で、生活保護を受けるためのノウハウ(と言うと言葉が悪いですが)を書かれているわけです。
まず、前提として、生活が生活保護法に照らして困窮している、もしくはその疑いのある状態の人が、窓口で申請さえできないのは明確に違法です
しかし、実際に窓口での対応が不適切である場合に備えて、弁護士等の法律の専門家に相談しておくのは良い方法です。窓口に同行してもらえればいうことありません。

あるいは、とくに面識があるわけでもない共産党の市議会議員に相談したら、あっさり生活保護費が受給できるようになったケースもあったという話も聞きました。(とくに共産党への参加や、赤旗の購読を勧められるというようなこともなかったということです)

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↑についてですが、これは役所というものの性格を端的に示していると思います。
どういうことかと言うと、役所は予算で動いているわけで、逆に言うと予算が通らなければどうにもならない。その予算を通すのは議会であり、それを構成する議員に対しては自然と腰が低くなるわけです。この場合、議員の所属政党がどこか、というのはあまり問題ではありません。なぜなら、議員であるということは、それだけで議会での発言権があるということであり、役所側としては、彼らに議会で「社会福祉事務所の対応は不適切である」などど発言してもらっては困るからです。
もちろん、法に照らして生活保護の対象にならない場合は、申請が却下されることもあるでしょうが、その場合でも望むなら「不服申し立て」ができます。申請できなければそれもできませんので、法律の専門家にせよ政治家にせよ、頼れるものに頼っておいて損はないと思います。
ちなみに、こういう場合に実際に動いてくれるのは、おもに共産党公明党の議員です。ほかの政党や無所属の議員でも動いてくれる人はいるかもしれませんが、僕個人はそういう話は寡聞にして知りません。この場合の「動いてくれる」というのは、その議員本人(や代理の人間)が窓口まで同行してくれる/事前に電話などで「これこれこういう人が相談に行きますので、適切に対応してください」というようなことを連絡しておいてくれる/その両方、といったことです。

しかし、法律上は、

単に、「生活保護を受ける前に、家族に扶養してもらうことを優先して考慮すべき」、

というだけの話で、

扶養義務は生活保護費受給の絶対条件ではない

ということです。

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これは、法律の中身についての話でもありますが、ここに引用した点については、国は各自治体に対して「扶養義務者についての調査を徹底するように」という趣旨の指導を行っています。これはこれで問題なのですが*4、そういう実態はあるので、扶養義務者からの援助が絶対に必要というわけではないとはいえ、親族に対して社会福祉事務所から何らかの連絡が行くことは覚悟しておいた方がいいとは思います。もちろん、DVの被害から逃げてきた人の場合など、例外(扶養義務者の調査をしない場合)はあります。

たとえば、自動車を所有していると生活保護受給できないらしいですが、

自動車が贅沢品だったのは、ずいぶん昔の話です。

現在では、とくに交通の不便な田舎に住んでいる場合、

自動車は贅沢品ではなく、生活必需品に近いケースも多いですから。



あと、クーラーもダメだったんじゃないかな。

これも、今となっては贅沢品と考えるのは、時代遅れですよね。

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自動車の所有がダメ、というのはその通りで、まれに認められる場合もありますが、かなりのレアケースでしょうね。僻地に居住していて他に交通手段が全くなくしかも身体障害などがある、とか。
ただ、ブコメにも書きましたが、自動車の場合は贅沢品だからというより、所有しているだけでコストがかかる、という点を考慮すべきなんだろうなと思います。燃料費とか自動車税とか車検代とか任意保険の保険料とか、他にもあるかもしれませんが、ここら辺は絶対かかりますよね。それを払えるなら、生活費にあてろよ、というのが制度上の建前なわけです。あと、これが一番でかいのですが、もし、生活費をやりくりできなくて任意保険などに未加入だった場合(それでなくても未加入の人もいるわけですが)、事故を起こして被害を誰かに与えたとき、その補償をどうやってするのかという問題があります。というか、実質的に補償はできないでしょうから、被害者が丸損、という事態になるのは目に見えています。
でも、時代の流れから、保険(事故の補償)の問題がクリアされれば所有してもよくなるかもしれませんね。
クーラーについては、その地域ごとの普及率によっても違ったような記憶がありますが、今はかなり認められてきてるんじゃないかな。少なくとも、生活費をやりくりして貯金して買う分には問題なかったような気がします。




さて、ここまではfromdusktildawnさんのエントリに対して勝手に補足してみたわけですが、この生活保護制度自体の問題は、それはそれでとても重要です。自分だって、いつこの制度のお世話になるとも限りませんから。
ただ、この制度そのものの疲労具合はかなりのものでしょうね。一番の問題は、生活保護を受けるのに敷居が高く思われる反面、一度保護を受けると、そこからの脱却はよほどの強い意志がないと難しくなってしまいがち、という点ではないでしょうか。それこそ、「4代続けて生活保護」みたいなことになったりする、とか。
前に書いた記憶がありますが、現行の生活保護制度以外に、生活保護よりも条件の緩い無利子の貸付金制度のようなものを作ったらどうなんだろうか、とか。素人考えですが。当然焦げ付くでしょうが、最初から生活保護にするよりはマシなんじゃないかと思うのです。まぁ、実現したら、サラ金が軒並み潰れそうでもありますが。
セーフティネットの充実は必要です。どのような方法がいいのかはよく分からないところもあって、偉い人考えてよそれが仕事でしょ、とも思わないでもないのですが、考え続けるべきことと個人的には思っています。まー、結局のところ雇用の安定がもう少し実現できればいいのに、ってのが一番なんですけど。


あー、そうそう、ホームレスのことについてなんですが、ホームレスでも生活保護は受給できます。ただし、ホームレスなら誰でもいいというわけではありません。元気で若くて十分働ける能力がある人は、簡単には受けれません。そうは言っても、住む所も何にもなくてどうやって働くんだよ、ってのはあるので、ホームレス対策を実施している大きな都市、たとえば東京・横浜・名古屋・大阪その他へ行った方がいいよ、という意味でブコメに書きました。
そういう都市では、たいていの場合、仮の住居として「施設」を用意しています。この「施設」も問題が多々あるのですが、それもない田舎でホームレスをやるよりは、都会に出た方がまだマシじゃないか、と。そこを突破口として、生活保護を受けてアパートへ入居できるようになった人は、割合として多いか少ないかは分かりませんが、確実に増えています。ま、前がゼロに限りなく近い状態でしたから、ね。

*1:政令とか通知とか基準の根拠はいろいろですが。

*2:平成13年度版という古い内容なのが玉に瑕ですが。この間に運用上の大きな変更点がいくつかありましたが、基本原則は大きくは変わっていないはず。

*3:念のため。生活保護の受給額が地域ごとに異なるのは、国が定めた「級地」区分があるせいです。各自治体に裁量があるわけではありません。たとえば、東京23区と島しょ部などでは、受給する側の条件が同じなら、同じ都内であっても、受給額に数万円単位の違いが出てくることもあります。今の日本で都市部とその他の地域で生活にかかる費用がそんなに違うものかというのは、それはそれで一つの問題です。

*4:これまでの経緯から親族との関係が悪く、明らかに扶養どころか援助の見込みもない相手に対しても調査しなければならないので、本人にもその扶養義務者にとっても不愉快だし、現場の事務量が増えるとか。他にもいろいろ。