リテラシー以前の問題として

http://www.sankei.co.jp/news/061001/sha002.htm
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/education/21476/
上記のURLは、産経新聞の同じ内容の記事のものです。以下引用↓

「高級外車を乗り回し、携帯電話に何万円も払っているのに、給食費は払わない保護者がいる」。文部科学省にはこんな報告が相次いで寄せられている。外車に乗るような世帯だけではない。国や自治体は所得により生活保護給食費分を上乗せして支給しているが、それでも給食費を滞納する保護者も多いという。(強調は引用者。)

ま、他の人も指摘している人が居るようですが、「高級外車」で「携帯電話に何万円」で「給食費を払わない」という親と、生活保護を受けている世帯が、同じように給食費を滞納しているかのような印象を与える記事ですね。こういうのには注意が必要。
とはいえ、給食費を支払わないということは肯定されるべきことではないので、当然批判はされるでしょう。それはいい。
でも、ちょっとおかしい記事ですね、これは。
何がおかしいのか。
生活保護受給世帯が、給食費分を上乗せして支給されていながら、不当に滞納しているようにこの記事では読めるのですが、そもそも義務教育における「給食費」は、生活保護制度の中でどういう位置づけなのでしょうか。
生活保護110番』というサイトに「平成13年度の実施要領*1というページがあります。ちょっと古い資料になりますが、参照したい箇所は現在でも変わっていないようなので、これはこれで参考になります。このページの中の(「最低生活費」という項目をクリックすると出てくる)「教育費」の項目のところに、「学校給食費」について、「保護者が負担すべき給食費の額」を支給する、という規定があります。産経の記事の「生活保護給食費分を上乗せして支給して」ということの根拠はこれですね。
ところで、さらに下にスクロールすると、以下のような記述があります。

〔学校長渡しの給食費の認定〕
問(第4の13)給食費を学校長に直接交付する場合であって前渡の必要があるとき,当該給食費の認定の取扱いは如何にしたらよいか。
答 前渡の必要があると認定される給食費の概算額を毎月計上し,毎学年おおむね2回程度,適宜な時期に精算を行うようにされたい。
 なお,保護を停止し,又は廃止するときは,そのときに精算を行われたい。(強調は引用者。)

ここから分かるのは、「生活保護から、給食費を上乗せ支給するときは、受給者にではなく学校に直接交付できる」ということです。
ということは、「学校に給食費を直接交付している限り、生活保護の受給者が給食費を滞納することはありえない。」ということになります。
実際、ほとんどの自治体ではこのような(学校へ直接交付する)形を取っていると思います。もし、そうしていなかったのなら、それは自治体の怠慢です。*2
だから、この産経の記事が、生活保護受給者を含めて「給食費を滞納する親」を非難しているとしたら、それはお門違いだよ、と。もう少しきちんと調べてから、なるべく誤解の出ないような書き方で、記事を書いていただきたかったな、と思います。


給食費を滞納する親」への批判はそれはそれで必要かもしれませんが、こういうあからさまなミスリードはいただけませんね。

*1:生活保護の実際の運用は、この実施要領に基づいて行われることになっています。

*2:お役所言葉で「○○することができる」というのは、特別の事情が無ければ「○○するのが望ましい」、または「○○しなさいよ」という意味であることが多いです。