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たぶん今年最後の更新に、最近の読書と見た映画のメモ。

まずは読書メモから。

蛇 (講談社学術文庫)

蛇 (講談社学術文庫)

これは面白かったですね。蛇の生態の話から始まって、それが文化や慣習の中にどう溶け込んでいるのか、様々な角度から検証していくといった内容。「信仰」とタイトルにある通り、信仰の対象としての蛇について「これも蛇、あれも蛇」と指摘されていくのですが、ほんとにこれでいいのかと若干疑問に思いつつも、自分にとって未知の知見が示されていくのは、なかなか刺激的な読書体験でした。鏡の考察と諏訪神社のミシャグチ神の考察が特に興味深かったです。


天皇はなぜ生き残ったか (新潮新書)

天皇はなぜ生き残ったか (新潮新書)

同じ著者の『武士から王へ』に続けて読んだもの。正直、タイトルの「なぜ」の部分については食い足りなさが残りました。でも、「後醍醐天皇は言われる程傑出した人物じゃないんじゃね」とか「権威も剥ぎ取られた天皇」とか「情報と文化の王としての天皇」といった内容は面白かったですね。ただ、結構『武士から王へ』と内容が被ってて、それはテーマが近いこともあって仕方ないんでしょうが、ちょっと微妙ではありました。
個人的な興味の問題で言うと、この本で江戸時代より前、安土桃山時代くらいまでの天皇の存在がどういうものだったかはある程度つかめてきたかな、あとは、江戸期以降ももう少し見ておきたいな、と思ってます。


酔いがさめたら、うちに帰ろう。 (講談社文庫)

酔いがさめたら、うちに帰ろう。 (講談社文庫)

いわゆる私小説ですね。作者の鴨志田穣氏は2007年に亡くなられています。一言で言ってしまえば、アルコール依存症の人が家庭や生活や健康といったものを失い、そしてそれらを少しずつ回復していく過程を淡々と綴った小説、ということになりますかね。俺は、鴨志田氏のことを鴨ちゃんと呼ぶくらいには親しみを感じていますが、それは彼の奥さんであった西原理恵子さんの漫画に負うところが大きいです。彼女の作品を通して何となく身近に感じていた鴨ちゃんが亡くなった時は結構ショックでした。そういえば、アルコール依存症について前にこのブログで書いたときにも、彼のことを引き合いに出しましたっけ。→http://d.hatena.ne.jp/nijuusannmiri/20080408
この小説について言えば、これを読んで、俺の中では鴨志田穣という作家の評価をだいぶ変えました。00年代で最も重要な作家だったのではないか、と。少なくとも、個人的には。
端から見ると深刻この上ない状況に見えるのに、それを描く筆致は淡々として、ときにユーモラスでさえある、こういうのが書ける人というのは得難いものだと思うんですよね。欲を言えば、もっとこの続きが読みたかったな、と。



続いて、映画鑑賞メモ。
まずは、『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』。
特に何の事前情報もなく見てきました。見てからもう一月くらい経ってるので、結構忘れちゃってますが、わりと良かったんではないかな、と。若き日のジョン・レノンビートルズになる前のジョンを描くというのはなかなか勇気のいる挑戦だったと思いますが、俺から見ると、普通の良質な青春映画として成立していて、好感を持ちましたね。
ジョンという人は、特に日本ではかなり聖人君子的なイメージで消費されてるんじゃないかと思うのですが、俺がたしか小学生のときに読んだビートルズの伝記本にも、家庭生活の面ではかなり無茶苦茶だったというふうに書かれてて、表裏のギャップがかなりあったんだろうな、と思うんですよね。
この映画の中のジョンは、とんでもない不良で、まー、今の言葉でいえばDQN? そんな感じです。後のDV野郎の片鱗もちゃんとあって、彼の聖人君子イメージをぶっ壊してくれてて、そこはとてもよかった。ストーリーの重要部分は、ジョンとその実母と育ての親である伯母との間の複雑な人間模様、といったところ。こういうのをきっちり描いてくれる映画が俺は好きですね。ジョンの生い立ちがこの映画の通りだったと言えるかどうかは分かりませんが、1950年代の普通の若者を描いた作品として見て面白かったです。
印象に残ったのは、ジョンがニュース映画でエルビスの映像を見て前のめりになっっていくところと、彼が初めてギターを手に入れたときに自分の部屋にそれを飾って眺めるシーン。あー、誰でも同じことやるんだな、と。俺も初めてベース買ったとき、似たようなことやったな、と。あれですよ、アニメの『けいおん!』で唯が初めて買ったギターに名前を付けてうっとりするところがあったと思うんだけど、あれと基本的には同じ。そういうのが、リアル、かな。
ああ、あと、ミミ伯母さんは最高です。


最後は『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』の映画版。
上記の鴨ちゃんの小説の映画化ですね。
これはですね、もう予告編を見た段階で涙腺が危なくてですね、実際に見たらどうなっちゃうんだろうと思ってたのですが、案の定、後半は泣かされっぱなしでした。
欠点はないとは言いません。編集の問題なのか、若干時系列が分かりにくいかと。俺は原作を読んだばっかりだったので、その辺の問題は実際はなかったんだけれど、前後のつながりが1日後なのか数ヵ月後なのか1年後なのかちょっとつかみにくい気がしました。それはひょっとしたら意図された演出だったかもしれませんが。
しかし、そんなことは瑣末なことです。この映画で素晴らしかったのは、俳優さんたちの演技! 主演の浅野忠信さん始め、共演の永作博美さんも子役の子たちも、その他の脇を固めた方々もすごく良かったと思う。
なんというか、見ながら全然冷静でいられなかったので、「評価」という意味では自分に自信がありませんが見れてよかったな、と。
西原さんもちょっと出演しています。*1
さて、このあとには『毎日かあさん』の映画版というのが控えているわけですが、どう仕上がっているのか楽しみなような怖いような…。

*1:さて、どこに出ているでしょうか?という「ウォーリーを探せ」状態ですが。