澁澤龍彦『高丘親王航海記』読了
- 作者: 澁澤龍彦
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1990/10
- メディア: 文庫
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たぶん、読み始める前に「大文字の物語」をなんとなく期待していたと思うのですが、すぐに「これはそういうもんじゃないな」と気付きました。括りとしては幻想小説ということになるんでしょうが、なんだろう、そういう枠にはめようとしてもはみ出してしまう作品であるという印象です。
「大文字の物語ではない」と書きましたが、それは、この作品の表面をなぞっていっても血沸き肉踊るようなエピソードには出会えない、というだけのことです。(表面をなぞるだけでも、十分に耽美的な、あるいは蠱惑的なエピソードには出会えますが。)
でも、この作品では、ある意味で「壮大な物語」が展開されているようにも思えます。それは、ある種の人生観というか死生観とでも呼べばいいのでしょうか。この物語を深く味わおうとするなら、自分自身がどのように生きどのように死ぬのか、そういうことに向き合わなくてはならない、そんな気がします。
で、僕自身は、正直なところ、自分がどう死ぬのかということについてリアリティーを持って考えることが、まだまだ難しいと感じています。それは同時に、自分がどう生きるのかが定まっていない、ということを意味しているのかもしれません。定まるときなんてくるのでしょうか? いや、そうではなくて、単純に僕が若くて(と言ってもそんなに若くもない)一応健康だから、「死」を身近に感じないだけなのかもしれませんが。
とにかく、僕は、自分自身がこの作品に追い付いていない、そう思えてしまうんです。もう少し時間を置いて読み直してみたいですね。そのときは、また違った感想を持てるかもしれないから。