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俺もBABYMETALについて語るよ。ついでにPerfumeと『1998年の宇多田ヒカル』についてもちょっと語るよ。

 なんかもう、ブログを書くのが久しぶりすぎて、書き方が分からなくなってます。(>_<)
 さて、何について書くかというと、BABYMETALですよ。2ndアルバムがリリースされてから既に1か月が経ちましたが、いまだに分析記事が書かれていたりして、なんというか、こういう風についつい何か語りたくなってしまう存在になったんだなー、などと思ったりするわけです。先に明らかにしておきますが、俺はBABYMETALが好きだという立場からこの文章を書いています。

なぜ「BABYMETAL」は海外で成功して「Perfume」や「きゃりーぱみゅぱみゅ」は失敗したか - Letter from Kyoto

Perfumeが最初注目された時の印象は「よくわからないけどなんか凄い」だった。当時のJ-POPシーンにはテクノ色なんてなかったから新鮮だった。同時期に、Perfumeの音楽プロデューサーである中田ヤスタカcapsuleは、FLASHBACKというアルバムを出しておりiTunes上で海外ウケしていた。Perfumeのよくわからない凄さを中田ヤスタカが海外向けに売り出せば「これ、いけるんじゃね?」と思った。でも実際はそうならなかった。ポリリズムで火が点いてからのPerfumeは、思いっきり日本の市場向けに売り出された。テレビに出まくって音楽番組に出まくって、CMに出まくった。日本では確かに一斉を風靡した。でも僕は、あのままの路線で海外行けば良かったのに!!とすごく残念に思ったことを覚えている。

日本においてそういうことは普通だと思う。多少海外で評価を得たところで、まず日本の市場をおさえてから海外進出を狙う、というのが今までの日本式スタイルだろう。逆に言えば、それをやるから今まで失敗してきた。BABYMETALについては、先に日本よりも海外で評価された。彼女らを支えるチームがすごかったのは、そこから日本の市場に合わせるのではなく、海外でウケたポイントを掴んでそっちに振り切ったところだろう。これがもし日本でそこそこ評価を得ていると、日本のファン目線や音楽業界のしがらみなどがあって海外向けに振り切るなんていう自由が効かない。Perfumeきゃりーぱみゅぱみゅも日本の市場に合わせた音楽とキャラクターを提供して日本で売れてしまったばかりに、今さら海外ウケする仕様に振り切ることは不可能だ。BABYMETALがもし先に日本で売れていたら、ただの中堅ヘビメタアイドルで終わっていたと思う。少なくともビルボードのランクインやウェンブリーなんて偉業には到達しなかったはず。

 まー、Perfumeやきゃりーが「失敗」と言われると結構つらいな、と思ってしまいますね。ちなみに俺は、PerfumeはCD3枚くらい持ってる、きゃりーはテレビなどのマスメディアを通してしか知らない、といった程度なので、特にその音楽について何かを語りうるような立場ではないのですが、そういう俺の認識では、彼女らは日本発のアーティストとしては、そこそこ受け入れられてる方なのでは、と。
 ただ、この分析自体はこれはこれで見方の一つではあるよな、と思います。BABYMETALの海外での受け入れられ方と比較すれば、Perfumeやきゃりーはまだそこまで行けてないのは確かだし。
 でもなー、BABYMETALが海外でウケたのは、海外向けに「振り切った」からなのかなー、とも思うわけです。
 Twitterでも書いたのですが*1、そもそもBABYMETALの最初期は、普通のアイドル的な楽曲にメタル風のアレンジを施してみた、という以上のものではなかったんですよね。


BABYMETAL - ド・キ・ド・キ☆モーニング - Doki Doki☆Morning (OFFICIAL)


 ところが、これに海外のメタル系のニュースサイトが食いついたんですね。

Babymetal: Japanese Princesses Of 'Idol' Metal - Blabbermouth.net

 って、これ、2011年の記事か、もう5年近く前なんだ…。それはともかく、今はさすがに削除されてるようですが、当時のこの記事のコメント欄には、賛否両論というか、ほぼ否の意見ばかりが投稿されており、中には人種差別的というか人種差別そのもののコメントもありました。

 「日本にもう一度水爆を落とせ!」
 「日本に落としたのは原爆だ。この物知らずめ」
 「知るか、ボケ」

 …みたいなやり取りがあって、ヘイトスピーチもここまで来ると笑えるんだな、と思ったことを記憶しています。それでも、あえて当時の海外のメタルファンの気持ちを斟酌すると、「俺たちの聖域に日本のアイドル風情が土足で上がり込んできて冒涜しやがって」というものだったでしょうから、肯定はしないけれどその感情は理解できないものでもないな、と。
 俺自身は好きなメタルのバンドはいくつもあるけれど、メタルというジャンルそのものに忠誠心を持つタイプではなかったので、特に何とも思わず「あー、アイドルのよくある企画ものの一つだねー。これにマジで怒っちゃう海外のメタル好きは、純粋でまっすぐすぎる*2なー」などと、冷めた上から目線でこの騒動を眺めていたのですが、今思うと、作り手はある種の手ごたえを感じてたんでしょうね。BABYMETALは、良くも悪くもそれだけ注目を集めてしまう存在である、と。
 で、そこで、作り手がやったことは何かと言えば、「まずはコアなアイドルファンを取りに行く」ということがあり、それから「コアな音楽好きにアピールするクオリティの曲をリリースしていく」というものだったわけです。この辺は既に言い尽くされてることだと思うので、あまり詳しく書きませんが、俺個人がBABYMETALに本格的に興味を持ったのは、COALTAR OF THE DEEPERSや特撮のNARASAKIさんが作曲した「ヘドバンギャー」から。その後、元THE MAD CAPSULE MARKETS/現AA=の上田剛士さん作曲の「ギミチョコ!!」などが決定打になってハマっていった感じです。*3
 何が言いたいかというと、この時点で、作り手は別に海外向けに振り切ってるわけではなく、ちゃんと日本国内市場向けに売ってるわけですよ、と。サマーフェスへの出演など海外への本格的な進出は、1stアルバム発売後のことで、日本国内でそれなりにセールス基盤を作ってからなんですよね。そして、それをそのまま海外に持って行ってる。俺の目からは、特に海外仕様にしたわけではなく、日本でやってたことをそのまま海外でも通用させてしまった、という風に見える。そこがポイントなんじゃないかな、と思うんですよね。

 ここで思い出すのが、数か月ほど前に読んだこの本。↓

1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)

1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)

 本当はこの本についても感想を書かなきゃなー、と思いながらできてません…。が、それは置いといて。
 この本の中で、著者の宇野さんは宇多田ヒカルの海外進出プロジェクト=Utadaが海外で「売れなかった」理由として、いきなり世界のポップミュージックの最前線に立とうとしたからだ、と書かれています。以下引用。

 アメリカの音楽マーケットは強固なジャンルのセグメントによって成り立っている。もちろんそこには人種の壁もあるが、人種以前に、まずはどのジャンルの音楽であるかをはっきり示さないと、ジャンルによって細かく専門が分かれているラジオでかかる機会を得ることもできない。マドンナは80年代前半のディスコ・ミュージックのシーンから登場した。ビョークはロックバンド、シュガーキューブスのボーカリストとして80年代後半のニューウェーブ・ロックのシーンから登場した。現在ではあらゆるジャンルや人種を横断して支持されているトップ・スターたちも、最初は限定されたジャンルにおける注目のニューカマーだった。しかし、Utadaはそうしたプロセスを一気に飛び越えようとしたのだ。

 …で、結果として失敗した、と。つまり、あれだけアメリカ市場向けに念入りにプロダクトされたように見えた(聞こえた)Utadaの音楽であっても、何のジャンルに分類したらいいのか分からないと受け止められていたのではないか、と。それでいくと、BABYMETALは分かりやすい、超分かりやすい、分かりやすすぎて困る、くらいのもんでしょう。
 さらに言えば、Perfumeも分かりやすい、少なくとも分かりにくくはない。でも、テクノポップアイドルという路線は、メタル+アイドルほどのインパクトはなかったかもしれない。まー、ありかなしかで言えば、あり、だよね、みたいな。BABYMETAL以前は、メタル+アイドルなんて(少なくとも欧米では)絶対なし!!!、だったのと比べちゃうとね、ということ。でも、Perfumeがもっとブレイクするとしたら、これからなんじゃないかとも思うんですが、その話は後で。
 『1998年の宇多田ヒカル』から、もう少し引用します。Utadaの作品としての「失敗」の理由についての部分。

 しかし、やがて気付いた。『EXODUS』も『This Is The One』も「音」そのものの宇多田ヒカル濃度が低いのだ。それは、ほぼ同時期に制作された、「All Songs Written and Arranged by Utada Hikaru」印、まさに宇多田ヒカル血中濃度100パーセントの4枚目のアルバム『ULTRA BLUE』(2006年)や5枚目のアルバム『HEART STATION』(2008年)と比べて、というだけではない。『DEEP RIVER』までのアルバムと比べても、やはり圧倒的に宇多田ヒカル濃度が薄いのだ。

『EXODUS』と『This Is The One』では、「編曲」という宇多田ヒカルの音楽の要の部分を売れっ子プロデューサーに任せた一部の曲だけでなく、そんな宇多田ヒカルの声の「聖域」までもが侵されてしまっていた。
 宇多田ヒカルの音楽の世界というのは、良くも悪くもそれだけ特殊な、言葉を換えるなら、フラジャイルなバランスの上に成り立っている世界なのだ。

 宇多田ヒカルの音楽はコーラスさえも本人の声で重ねられていたが、Utadaはそうではなかった、ということが作品としての「失敗」に繋がってしまった。声に限らず、既に完成の域にあった世界に「異物」が混入してしまったというある種の残念感、というか。
 無理を承知でここでもBABYMETALを比較すれば、彼女らは日本でやってたものをそのまま何も変えずに、日本語の歌詞さえもそのままに海外に持って行った。そこに「異物」の混入する隙などあるはずもなかった。あえて言えば、BABYMETALそのものが強烈な「異物」だった、とは言えるかもしれませんが。だから、「KARATE」みたいな曲を聴いても、海外向けのサービスということも思うけれど、以前からの路線を突き進んでるな、とも思うわけです。


BABYMETAL "KARATE" Official Music Video - New Album Metal Resistance OUT April 1st
 
 …と、ここまでいろいろ書いてきて、図らずも分析めいてきてしまいました。卓袱台返しのようで申し訳ないような気もしつつ、それでも書いちゃいますが、でも、結局、これって全部、結果論だよね、と。
 結果をとらえてあれこれ理屈は付けられるとしても、何が成功して失敗するか、売れるか売れないか、そんなことはやってみないと分からないわけです。たまたまBABYMETALは成功したけれども、これを他の人がやって上手くいく保証も何もない。Utadaの時代に今のBABYMETALと同じようなやり方でやれと言ったって、10人中10人が「無理でしょ」と返したでしょう。
 UtadaPerfumeが最初に海外を目指した頃と、BABYMETALがブレイクした現在では、音楽をめぐる状況が日本にしても海外にしても大きく違っている。そんな中で一つだけ確かなのは、日本の音楽を海外で受け入れてもらいたいと思うなら、明確な意思を持ってそれを持って行かないといけない、ということだと思います。なぜなら、そうやって持っていかなければマスにリーチしないからです。日本の音楽を愛好する海外のファン層は、ゼロではないにせよ、限りなく薄いからです。そこはネットだけではカバーできない。
 だから、ロックではCrossfaithやColdrainやあるいはONE OK ROCKも含めて、試行錯誤しながら戦っているし、逆にPerfumeもまだまだこれからブレイクする可能性を持ってる、とも思うわけです。

 ここから少しだけPerfumeの話を書きます。以前からそうだったと言えばそうなんですが、Perfumeの曲って、いわゆる47抜き音階*4を使った歌メロが非常に多い。これって、結構強烈に「和」風に聴こえると思うんですよね。こないだ出たアルバムを聴いてもそう感じる。日本国内向けというより、むしろ、海外市場を意識してるんじゃないか、と。海外の音楽ファンに日本のエキゾチックな魅力をアピールしようとしているんじゃないか、と思うんですよ。それが成功するかどうかは分かりませんが、いつか成功したら面白いな、と思います。


[MV] Perfume 「FLASH」


 だいたいPerfumeもBABYMETALも、歌詞を英語に無理に変えたりせずに日本語のままやってるのがすげーなー、と俺なんかは思います。そうやって、日本語の音楽が海外でも受け入れられる土壌が育ってくれば、それこそUtadaではなく宇多田ヒカルの音楽がそのままに受け入れられるのではないか、そうなってくれると嬉しいなー、というのを、この記事の結論としたいと思います。*5

METAL RESISTANCE(通常盤)

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BABYMETAL-LTD.EDITION

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COSMIC EXPLORER

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COSMIC EXPLORER(初回限定盤B)(2CD+DVD)

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花束を君に

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真夏の通り雨

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*1:この辺にまとまってます。→ http://twilog.org/nijuusannmiri/date-160410

*2:洒落が分からん、の言い換え。

*3:過去の記事で、2014年にリリースされたアルバムの中で19位に選んでます。→ 2014年 私的ベスト20(洋楽邦楽問わず) その1 - 23mmの銃口から飛び出す弾丸は

*4:47抜き音階が何かわからない人は、各自ググるように。

*5:で、蛇足のようについ付け足しちゃうんですが、BABYMETALが海外でブレイクしたと言っても、実際には日本国内での流通の方がまだ圧倒的に多いんですよね。その辺もちゃんと踏まえておかないと、実態を見誤ってしまうかもしれません。