精神科の社会的入院についてのメモ。

社会的入院。このネタ、前にブログで書こうかと思ったんだよな。仕入れた話の裏を取るのが面倒で放置してたんだった。あらためて書くか、どうしようか。

http://twitter.com/nijuusannmiri/statuses/772727186

別に裏を取らずにメモをそのまま公開しちゃうか。それもありか。

http://twitter.com/nijuusannmiri/statuses/772727507

ごくごく一般論として成立するようならやってもいいかも。

http://twitter.com/nijuusannmiri/statuses/772727869

というわけで、書きます。以下の内容は、ちょっと前に、ある精神科のお医者さんから僕が聞いた話を、その後メモとしてまとめたものです。上記のとおり、裏は取ってませんので、今ひとつ信憑性に欠ける、というか間違い(僕の聞き違い・勘違いも含めて)があるかもしれませんが、何かの参考になれば。
あ、ちなみに社会的入院については、Wikipediaにも項目がありました。→社会的入院 - Wikipedia
精神障害者の問題については、内容が薄いかなという印象もありますが、「社会的入院 (しゃかいてきにゅういん)とは、介護を要する老人もしくは精神障害で長期入院を余儀なくされ社会性を失った人が、自宅で面倒を見られないために惰性的に入院を継続させられる状態のことである」ということだけは、最低限知っておいて損はないと思いますよ。
さて、肝心のメモの内容は、以下の通り。

1.昔と今の精神科医療について

戦後、社会状況が不安定な中、行政は精神障害者の収容を主とする精神科医療を推進してきた。(病床を増やすことによって、診療報酬が有利になるような仕組みを作ってきた。)それに関連して、病院側も多数の患者に数少ない医療・看護従事者で当たるため、強制力を持った治療や看護を行ってきた(人権的に問題がある)。また、精神障害者に対する偏見を除去するための教育も欠如していた
現在、行政の方針が「入院から地域へ」と変わったが、これは患者の人権に対する配慮もあるとは言え、財政難から医療費を抑制したいということや、欧米からの圧力(人権問題についてや、医療関係の産業の市場開放など)による影響もある。そのため、(海外と比較して多いとされる)病床数の大幅な削減を求められている。
しかし、社会的入院と言われる患者の地域生活への移行については、十分な予算が付いていないのが現状である。一方で、マスコミや世論からは、(特に犯罪を犯す恐れのあるとされる精神障害者に対する)収容の期待もある。
こうした多くの矛盾から、病院の現場は混乱しているのが実状である。

2.数々の矛盾が精神科医療を苦しめているということ

患者中心の医療制度改革であれば、問題はないが、そこに市場開放を求める(主に米国からの)外圧や、財源論からくる診療報酬・補助金の削減なども絡み、現場は混乱している。
また、医療全般にかかわる国の機関も複数にわたり、それも問題を複雑にしている原因となっている。
例:厚生労働省医療制度改革の推進)、経済産業省(医療関連企業の管轄→市場開放への対応)、財務省(予算)、国土交通省療養型病床群*1の施設の建設)など。

3.なぜ社会復帰に予算が少ないのか

病床の削減が最優先の目標となっている。そして、戦後の政策から収容されてきた社会的入院患者(Old long stay)は自然に減少する*2とし、新たな長期入院患者(New long stay)を減らせば目標を達せられるという見通しである。そのため、社会復帰のための予算が増えることはない

4.在院日数を減らすのが良い医療なのか

病気の種類によって、短期の入院で十分な治療を行えないものもあり、画一的に入院期間を短縮するのがよいとは言えない。入院期間自体は、技術的には短縮可能*3

5.矛盾からの脱却のための考え方について

複雑な問題を単純化し、思い込みを修正する*4
例1:日本の総医療費はG7の中では最低。また、要医療者の医療へのアクセスも高い水準にある。(英国などでは、救急以外で医療にかかるまで2ヶ月以上かかることもある。)これらは、医療関係者の献身的な努力によるところが大きい。また、病院・病床数の多さはアクセスの面でメリットになっているとも言える。
例2:本来、患者自身の人権の尊重の観点から、社会復帰が目指されていたはずが、外圧や財源論の問題などが絡み、病床を削減することが目標になってしまっている。例1に挙げたような、メリットを生かした日本独自の解決策を模索すべきではないか。

6.精神病院は何をするべきか

政策的には、精神科医療の診療報酬の適正化入院者数や日数に応じたものではなく、患者の治癒に応じた新たな体系が必要)、社会復帰のためのインフラ整備(適正な予算配分、福祉・医療・介護の連携強化)、機能分担(特に診療所)の役割の明確化(医療連携と地域で生活できるコミュニティの形成)などが求められる。
病院側としては、医療対福祉の構図を解消し、このままでは医療・福祉ともに縮小してしまう状況を鑑みて、互いの連携に努める。また、必要な費用を適切に反映する全く新しい制度が必要



…と、まぁ、こんな感じだったわけですが、要するに、「戦後の政策として精神病患者(精神障害者)の社会的入院が進められてきたけれど、財政難や外圧によってその方針を変更せざるを得なくなったが、利権も絡んで行政側も船頭多くしてなんとやら状態。財政難が背景にあるので、患者の退院後の社会復帰についてもろくな予算がつかない。患者の人権的には、社会的入院の解消が望ましいのは分かり切ったことだが、現場は混乱している。そもそも、日本の医療費はそんなに高額ではないし、インフラも整っている。予算を削ることばかりでなく、もっと、本当に患者のためになるように仕組みを変えないといけない。診療報酬の制度も含めて抜本的に改革しないといけない」ということのようです。
具体的な行政への働きかけもなされているようですが、なかなか表に出てきませんね。(「全く新しい制度」というものも腹案はあるようだったのですが、この話を聞いた時には教えてもらえませんでした。)
一般市民というか社会全体が、もっとこの問題に関心を持つべきなんでしょうけどね。

*1:療養型病床群についてはこちらのページなどが参考になるかな。→http://www.chugoku-np.co.jp/kaigo/siren/kaigo1124.html

*2:早い話が、患者が高齢化しているので、死亡していくことで「自然に」減少するだろう、というひどい話。

*3:これは、時期が来たら機械的に患者を退院させるという意味に聞こえた。しかし、短期で患者を退院させても、空きが出た分新たな患者を入院させるので、入院患者の総数自体は大きく変化しないだろうという話もあった。

*4:これは他の事にも応用が利きそう。