みちアキさんを説得するのに、必要な材料に関するヒント

↓こちらの記事にインスパイアされて。

で、ブクマに「いつその層に落ちるかわからないから保険をかけとく、という考えはないだろうか?」って人がいらっしゃいましたが、これもなぁ。保険にたとえて語るんなら、どのくらいの割合でその層に落ちるのかというリスク、落ちたときの保障、そして保険料を合わせて提示してくださいよ。

「で、みちアキはどうするの?」 - つまりそれはぼくにとって切実な話ではなかったということ

じゃ、試しに提示してみるのも面白いかな、と。
いや、別に説得する必要なんてないし、説得できるとも思っていないんですが。本当は、タイトルも「自分が貧困層に落ちるリスクと、その保障と、コストを考えるためのヒント」とでもしておいた方がいいかもしれませんね。
まぁ、僕自身は今まで繰り返し書いてきたように、「ワーキングプア」に限った話にはあんまり興味が無いので、大雑把に「貧困層」と考えます。
あと、以下に書くことはあくまでも「ヒント」であって、客観的・資料的・統計的な正しさを保証するものでは全くありませんので、ご注意を。(正しい情報を知りたい方は、各自でお調べください。←不親切)


①リスク

まず、貧困層生活保護を受けている人とします。そうすると、どのくらいの割合の人が、生活保護を受けているのかが問題になります。
うろ覚えの記憶なのですが、生活保護を受けている世帯の割合が国内の全世帯のうち1%を超えた、というニュースが何年か前にありました。(これは一人暮しの人も10人家族の家も1世帯としてカウントしたものなので、実人口に対する割合が1%ということではありません。)今でもその状態は続いていると思います。「格差社会」が盛んに言われてる現状なら、もっと増えているかもしれないですね。
仮に、1〜1.5%くらいだとすると、100〜60軒あたり1軒は生活保護を受けていることになります。もちろん、これをもって貧困層に落ちる確率が1〜1.5%であるとは言えませんが、一つの目安にはなるでしょう。
さて、みちアキさんの場合は、職業がプログラマーということなので、たとえ勤め先が倒産した場合でも、再就職は(スキルが無い人よりは)比較的容易だと思われます。(給与水準は多少変わるかもしれませんが。)時間が掛かったとしても、失業保険や貯金で十分補えるでしょう。
他には、病気や事故による後遺症等のリスクもあります。医療保険などでどのくらいカバーできるかは契約内容次第ですが、重い障害を負った場合でも、障害年金などの対象になる可能性があります。(他にも傷病関係には、利用できそうな制度が結構あります。)
こうして考えると、みちアキさん(というか、普通に会社勤めの人)が貧困層に落ちるリスクはかなり低そうですね。リスクはゼロではない、といった程度でしょうか。
ただし、自営業やフリーランスの人、フリーターニートの人などはこのリスクが飛躍的に増大します。
ここらへんをどう考えるかは、その人次第ですね。


②保障

次に保障内容について。上に挙げた障害年金や失業保険なども、社会保障の一種ではありますが、ここではやはり生活保護の内容を考えてみます。
生活保護の場合、世帯ごとに金銭が支給されます。金額は、世帯構成や年齢、住んでいる地域などによって大分変わります*1が、みちアキさんのように東京都内に住む一人暮しの20〜30歳代くらいの人なら、家賃分を除いて8万円強になるはずです。*2家賃は、上限額がこれも地域ごとに決まっていて、しかも、上限額を超えるところに住んでいると、安いところに引っ越す必要がある場合があります。でも、範囲内の金額であれば家賃は全額支給されます。
他にも、生活保護を受けている間は国民年金は免除されます(申請免除している人と同じ扱いになる)し、NHKの受信料も免除されます。また、これが一番大きいのですが、医療費の自己負担額がゼロになります。国民健康保険には入れないので、保険料を払う必要はありません。*3この他にも、自治体ごとに水道料金の減免などが、あったりなかったりします。
そのかわり、解約返戻金があるような生命保険に加入していた場合は、解約してそれを生活費にあてなくてはいけませんし、自動車を持つこともできません。*4
あと、仕事をして収入がある場合は、その金額に応じて支給額が減ります。一応仕事をしないよりは、した方が手元に残る金額は多くなるようにはなっています。
これらが手厚い保障であるかどうかは、各自ご判断ください。


③コスト

コストの内容は、要する税金です。
国家予算に占める生活保護予算の割合を考えて、自分が支払っている所得税・住民税・消費税その他の合計金額と照らし合わせてみれば、自分が支払っているコストは自ずと明らかになるでしょう。



ちょっと長くなりましたが、まぁ、こんな感じですかね。かなりいいかげんで穴だらけの考察ですので、誰かフォローしてくれると嬉しいです。

*1:一般的に、都会ほど高く田舎ほど安い傾向があります。

*2:ちなみに、40歳代の夫婦と小学生の子どもの3人家族なら、家賃を除いて16万円くらいです。

*3:仕事をしていれば、いわゆる社会保険には入れます。その場合でも、窓口負担はゼロです。

*4:自動車は、維持費がかかることに加え、万一事故の加害者になってしまった場合に賠償能力がないなどの理由で、資産価値が無くても処分しないといけないのです。

ワーキングプアについて理解が深まらないまま、もうちょっと書いてみます。

さっき書いた*1記事に、トラックバックをいただいたので、私信返しを*2

ワーキングプア救済の議論議論というけれど、
ぶっちゃけ、ぼくは、あんまり議論が必要だとは思わないんですよ。

だって、議論の余地無く、今の生活保護基準は、厳しすぎですから。
いったい、あれのどこに議論に余地があるんですかね?
なんでそんなものに議論が必要なのか、さっぱり分からない。
単純に、基準や制度をもっと柔軟にするべきだと思います。一刻も早く。
いま、こうしている間も、彼らは苦しんでるわけで、それに対して牛歩戦術するのもなかなかサディスティックだと思うけどなぁ。そういうエグい趣味の人が多数派とも思えないんですよね。
『分裂勘違い君劇場グループ-劇場管理人のコメント-これかの日本のビジョンは「いかに幸せに衰退するか」だ』

リンク先のfromdusktildawnさんの記事の内容自体には、僕は反論・異論は今のところありません。「これからの日本の『いかに幸せに衰退するか』というビジョンを構築すべきだ」というのも、好きだと思える言い回しです。
ただ、ちょっと引っかかったのが、上に引用した部分。いや、生活保護の基準の問題に限れば、議論の余地はあります。でも、これをきちんと議論しだすと、相当エネルギーを使うことを覚悟しないといけないので、まず一つだけ。今の生活保護基準は確かに「厳しすぎ」の面もありますが、逆に「甘すぎ」とも言える部分もあります。だから、「一刻も早く」というのはそのとおりなんですが、制度の中身をどうするのかということについては、それとは別にきちんと検討した方がいいとも思います。
もちろん、個々の事情によって、緊急性の高いケースにはすぐに救済措置を講ずるべきだ、ということに関しては、賛成です。


僕が今ひとつよく分からないのは、ワーキングプアという「現象」は何も今始まったことではなくて、ずっと昔から存在していたもののはずで、あえてそういう名称を与えることによってどんな意味があるのか、ということ。前の記事にも書いたとおり、ある一定の水準以下の収入しかない人は生活保護の対象になりますから、わざわざそんなセンセーショナルな名称など必要なのでしょうか。
でも、そういう名称を与えることによって、ワーキングプアに当てはまる人たちに対する関心が(たとえ一時的であっても)高まる*3という効用はあったわけで、そういうポジティヴな側面を評価した方が良いのかもしれませんね。

*1:このサイトは日記モードにしているので、長文の記事が続くと読みにくくなるため、未来の日付を使用しましたが、書いているのは7/28です。

*2:と、思って今あちらの記事を見たら、僕の記事へのリンクが削除されてました。まぁ、いいや。せっかく書いたのでアップしときます。

*3:僕でさえ、こうしてブログのネタにしているくらいだし。

さっきNHKの『@ヒューマン』で、

生活保護の話題が取り上げられてましたね。タイムリーなのか何なのか。
北九州市では、保護の申請すら、なかなかさせてもらえないとか。でも、これって北九州市だけの問題じゃないと思います。
結局のところ、財政難もあってできるだけ保護率を抑えたい、ということなんでしょう。出演してた首都大の先生は、「生活保護には、予算の枠をはめない方がいい」というようなことをおっしゃってましたが、それは現実的ではないでしょうね。
僕の個人的な意見を言わせてもらえば、「支給額をある程度減らして、そのかわり受給できる人を増やすようにする」、そうするしかないような。とにかく、申請もできないような状況じゃ、話になりませんから。あと、都会と田舎で支給額に差があるのも、なるべくやめた方がいいと思います。



あ、前の記事で生活保護の支給額がウン万円ってのは、1ヶ月当たりの金額のことですから。書き忘れてましたね。