マスコミがマイナス感情や危機意識を煽るのはなぜか。

それは、その方が売れるからです。終了。



いやいや、それじゃあまりにもあまりにもなので、「何故売れるのか」について少しだけ。
例えば、自分の住んでいる地域で凶悪事件が起こったとして、新聞・雑誌やテレビなどがそれに関連して特集を組むときに、次のような二つの観点があったとします。

  1. この事件は極めて特殊なケースであって、これをもってこの地域の治安が悪化しているとは言えない。住民は今までどおりの生活を送っても問題無い。
  2. この事件は、この地域の治安が悪化していることを示している。住民は今までの生活を見直して、危機意識を持つべきである。

どちらが売れそうでしょうか。あるいは、読者や視聴者の関心を引くでしょうか。
明らかに後者だと思うわけです。だって、前者の観点ならば、その特集を読んでも読まなくても(見ても見なくても)その後の自分の生活に与える影響はゼロに近いんだもの。ところが、後者の観点ならば、その特集の内容を知っているかどうかは、その後の生活に大きな影響を与える可能性があるのです。読者(視聴者)は、必然的に後者の観点により大きな関心を払うでしょう。
マスコミだって営利企業なんですから、売れなくちゃしょうがない。テレビなら視聴率を稼がなくちゃいけない(それが広告料収入に直結しているから)。ならば、事実(あるいは事実から導き出される推論)がどうあれ、取るべき方針は「後者の観点に基づいて特集を組むこと」になるんじゃないか、と。
で、危機意識というものは、「ここまで用心すれば安心」ということにはなかなかならないものです。心配の種というものを全て取り除くことは、極めて難しい(というか、不可能である)からです。だから、逆に言うと、危機意識を煽れば煽るほど、マスコミの売り上げは伸びることになる。媒体によっては、抑制とか自制が働いている場合もあるかもしれませんが、僕の目に入る範囲に限っては、ある流れ(煽る方向付け)ができると、大体みんなそっちの方に流れて行っちゃってるなぁ、という感じですね。


マイナス感情を煽るというのもこれと似たような感じかな、と。
刑事事件の容疑者というのは、反社会的な行為をした者として「悪」にしておかなければならない(と、マスコミは考えている)。そして、マスコミはその人物がいかに「悪」であるかを描き出し、読者(視聴者)の関心を引く。それを「このような悪人を生み出すほど、社会全体が悪い方向に向かっている」という危機意識に結び付けていく。その危機意識を煽ることによって売り上げを伸ばそうとする。そういうことなんじゃないでしょうか。



ひとつ付け加えておくと、僕は「だからマスコミは駄目なんだ」と言いたいわけではないです。こういう見方もできるよね、ということを言っているだけです。マスコミには駄目なところもあるけれど、良いところもたくさんあるわけですから。
まぁ、マスコミの言説に「何か煽られてるな」と感じたら、ちょっと注意しましょうね、ってことで。