死刑制度を廃止した方がいい本当の理由を妄想してみた。（妄想だよ、妄想）

「死刑制度は廃止した方がいい」と言うと、「殺人事件の被害者やその遺族の気持ちになって考えてみろ」という反論を受けることがあります。というか、僕は直接言われたことはありませんが、メディアの論調などを見聞きすると、どうもそういうことらしいです。
なので、その立場になって少し考えてみることにしました。
とはいえ、結局のところ、僕には想像することしか出来ないので、本当のところは実際にそういう立場に置かれないと分からないことだ、とは思っています。が、それで片付けちゃうと「想像力が欠如した奴だ」と言われてしまうだけでしょうから、こうして書いてみることにした、と。
最初に断っておきますが、以下の文章には、不愉快で気分が悪くなるような内容が含まれている可能性がありますので、そういうものを読みたくないという方は、読むのをご遠慮下さい。

①自分が殺された場合

いきなりですが、これはちょっと無理。想像できないです。だって、自分はもう死んじゃってるわけですから、思考そのものができない状態なわけです。僕は、「死後の世界」なんかもそれほど信じていないので、死んだ後の自分の気持ちを思い浮かべるのは難しいです。仮に「転生」というものがあったとしても、転生した時点で前世の記憶は失われているわけだから、自分を殺した人に対してどうこう言うことはない、という気がします。頑張って想像してみても、自分を殺した人を死刑にして欲しいとか、あるいは誰か身内の人間に敵討ちして欲しいとか、うーん思うかなぁ、あんまり思わないような気がする、という感じ。

②自分の妻や子どもが殺された場合

あ、これは簡単。殺した人間を殺しますね、自分で。自分の手で。犯人がはっきりしているなら、裁判やら刑の執行やらを待たず、なんとしてでもやりますね。今のところはそういうふうに考えています。

③自分の妻や子どもを殺したのが、自分の別の子どもだった場合

これは難問ですね。これこそ本当にその立場になってみないと分からないことでしょう。無理やり考えてみて、自分の子どもであっても犯人を殺したいと思うかもしれないし、自分の子どもならばやはり更正させたいと思うかもしれない。いや、やっぱり分からないです。

…というわけで、いろいろ思い巡らしても、「やっぱり死刑は必要ないんじゃないかな」という結論になりそうな気が。②にしても、「死刑」を待たずに自分の手で殺すのであれば、制度としての「死刑」はいらないよ、と。
というか、僕としては①と②の間の感情の落差の方が気になります（自分自身の感情なんだけど）。この問題は、やはり死んだ人の気持ちは関係なくて、生きている人たちの気持ちの問題なんだ、ということを改めて感じました。②の感情では、妻や子どもが復讐を望んでいるかどうかなんてことは、もうどこかに吹っ飛んでますしね。
③は…、難しすぎる。こういう立場に立たされた人に対して、世間やメディアはどう言うんでしょうか？　まさか、「被害者感情を慰撫するために、犯人を死刑にすべきだ」とは言わないでしょうけど。それとも、「犯人が遺族の子どもであっても、殺人という重罪を犯したのだから、死刑を適用すべきだ」ということならば言えるでしょうか？多分言えないんじゃないかな。
もちろん、現実の個々の事件に対しては、それぞれの事情を勘案しなければいけません。けれども、②の場合のように分かりやすく犯人を叩けるときは徹底的に（「さっさと死刑にしろ」と言わんばかりの論調で）叩き、③のような少し複雑なケースのときには言葉を濁して深入りしない、というメディアの姿勢は一体何なんでしょうね。

ちょっと話がズレました。
今、死刑制度を支持する論調の中でいちばん有力な（そして反論しにくい）意見は、「被害者遺族の感情を慰撫するため」というものでしょうか。僕は、死刑以外に遺族を慰撫する制度なり手立てなりが、あまりにも無さ過ぎる状況の方が問題だと考えますし、死刑が本当に遺族の感情を慰撫することができるのかどうかも疑問に思っていますが、それはともかく。
結局、これは復讐というか「敵討ち」を奨励している、ということになりませんかね。そうであるなら、死刑を非公開ではなく公開にして、絞首刑の際にボタンを押すのも刑務所の職員さんなんかじゃなくて遺族の方に押してもらうようにした方が、よほどその趣旨に沿うのではないでしょうか。
それができないなら、やはり復讐による殺人という選択肢は消せないな、と。復讐（敵討ち）のためであっても、殺人は死刑になる可能性があります。僕としては、それも考慮したうえで②のように書いたつもりですが、死刑制度が無くなれば、その心配も無くなります。法律の枠内で慰撫されないのならば、法律の枠外に出てしまうのも手ですよね、どうせ死刑にならないのなら。つまり、これが「死刑制度を廃止した方がいい本当の理由」です。
あ、あくまでも妄想ですから、妄想。
それでは復讐の連鎖が延々と続くことになるよ、とか言われても仕方ないところが、妄想の妄想たる所以か。というか、こんなことを考えている時点で、「復讐って不毛だな」と気付きそうなものですが。

この問題に関しては、僕自身も矛盾だらけの感情を抱えているので、簡単には言い切れません。でも、敵討ちを肯定するにしても、それを国家に肩代わりしてもらうというのは、どうなんでしょうか。それはちょっと違うんじゃないかなぁ、というのが僕の個人的な考えです。