昔、『ひとつ屋根の下』ってテレビドラマがあってね、

もう16年以上前の番組なんだな。→『wikipedia:ひとつ屋根の下
江口洋介が主人公で、彼を長男とする6人の兄弟姉妹の話。福山雅治とか酒井法子とかも出てたんだね。
んで、その兄弟姉妹の二女を大路恵美が演じてたんだけど、彼女が17歳の誕生日にレイプされてしまうというエピソードがあったんだ。レイプしたのは良家のボンボンみたいな大学生かなんかで。ちょっとこの辺うろ覚えだけど。
で、その犯人の家というか親に雇われた弁護士かなんかが、この兄弟姉妹の家にやってきてごちゃごちゃ言うんだけれど、超簡単にまとめると「この件は金でなかったことにしてください」みたいなこと。そんで、江口洋介演じる長男以外の弟たちは、この手の事件で裁判まで行くと被害者(この場合は大路恵美が演じる二女)が世間とかマスコミから好奇の目で見られるだろうし、裁判そのものでもいろいろつらい思いをするだろう、そんな思いを二女に味わわせたくないから(要するに、セカンドレイプから二女を守るために)、この示談話に応じようと言う。「せいぜい大金をふんだくってやろうぜ」なんて強がりを言うくらいが精一杯な感じ。当時も今も、こういう風に示談にしてしまうのが、この手の事件の常道なのかもしれない。むしろ、加害者から慰謝料が取れるだけマシ、みたいな考え方もあったかもしれない。
ところが、江口洋介演じる長男はこの示談には応じない(被害届を出して刑事裁判をやる)と突っぱねるんだよね。そして、弟たちには示談を断る理由をはっきり話さない。弟たちは当然納得いかなくて、反発する。長男は、二女をセカンドレイプにわざわざ晒そうとしているのか、って。でも、長男はそれを最後まで貫く。
俺は、このドラマが放送された時は高校生ぐらいだったはずだが、実はそんなに真剣に見てたわけでもない*1。だけど、このエピソードだけは妙に記憶に残っている。逆にこのエピソード以外のドラマ全体のストーリーとか、全然覚えていない。その高校生だった当時の俺は、この江口洋介演じる長男の意図がいまいちよく理解できていなかった。どっちかと言うと、弟たち寄りの見方をしていたのかもしれない。ただ、このエピソードの終わりら辺で、兄弟のうちの誰かが、「長男は、二女がまた笑って生活できるようにするために、示談に応じなかったんだよ」みたいなことを言う台詞があって、そういうもんなのかな、と思ったぐらい。
でも、今になってみると、この長男の行動は正しかったと思わざるを得ない。示談に応じるということは、一つの犯罪を闇から闇に葬ることに他ならないし、同時にそれは、好奇の目で見たり被害者の落ち度を責め立てたりする(酷い時には「お前の方が相手にそうさせるよう仕向けたんだろう」と言う者さえいる)セカンドレイプを容認してしまうことにもつながる。「世間が酷いことを言うから訴えるのをやめよう」と言うのは、「世間に酷いことを言われても仕方ない状態に自分はなってしまったのだ」という認識*2を被害者に植え付けてしまいかねない。セカンドレイプから守ろうとした行為が、結果的にセカンドレイプに加担してしまうことになりかねないわけだ。
結局、この江口洋介演じる長男の行動こそが、二女を守る唯一の方法だったんだよね。
そんな風に、今の俺は思う。
俺はテレビドラマの歴史には疎いけれども、これは、今から考えてもなかなか画期的な内容だったんじゃないかな。少なくともレイプ教師が(刑事責任を問われることなく)その後も教鞭を執り続けるような内容の話よりはずっとマシだろう*3
そんなことを、ふと思い出しました、って話。
関連→『闇から闇に葬らないこと - 性犯罪の特徴と問題 - Ohnoblog 2

*1:というか、そもそも積極的にテレビドラマを見ることがあんまりなかった。このドラマは、妹が見ていたのを横から眺めてたんだろう、と思う。

*2:もちろんそんな認識は大間違いだ。

*3:でも、どちらも同じ脚本家が作った話なんだったと、ブコメを見て気付きました。