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「公設派遣村」の所在不明者数の真偽が混沌としているようだ。

日記 社会とか時事とか

最初に書いときますが、今シーズンの「公設派遣村」については俺はあんまり大きな関心を持ってません。
昨シーズンの「派遣村」については、「これで、国や各自治体の失業対策やホームレス対策が大きく変わるかもしれないな」という印象を抱いていましたので、それなりに興味を持ってニュースを追いかけていました。そして、実際に、(まだ不十分だという声もあるでしょうが)失業対策や住居対策もある程度実施されてきたようですし、ホームレス対策に関してはこれという目玉施策はあまりないようですが、かなり目に見えて生活保護への移行が進んでいるようです。*1
あと、派遣村元村長の湯浅誠氏が政府内で愚直に「越冬闘争」を繰り広げておられる姿は、これは皮肉でもなんでもなく頭が下がる思いです。*2
ただ、今回に関しては、通年の施策に関わる事態まで発展することは考えにくそうだということもあって、「公設派遣村」を実施することそのものはいいことだろうと思いますが、今までのところ上っ面の報道を眺める程度で済ませてきました。


さて、その「公設派遣村」についての報道で、「利用者が(就職活動などに使う交通費や昼食代という名目で)現金を支給されたら所在不明者が大量に発生した」というニュースが散見されたのですが、今日になって、グーグルニュースで検索していくつかの記事を眺めていたら、どうもよく分からなくなってきちゃったんですよね。で、あんまり関心がないと言いつつ、気にはなったので、メモ程度にちょっと。
産経(2010/1/12)の記事から引用。↓

年末年始に住居がない失業者に宿泊場所を提供する都の「公設派遣村」で就活費の支給直後に最大250人近い所在不明者が出た問題で、市民団体「ワンストップの会」が12日、石原慎太郎知事に8項目を要望した。

派遣村の継続など要請 市民団体が都知事に - MSN産経ニュース

日経(2010/1/13)の記事から引用。↓

都によると外出を届け出て午後7時半までに戻ってこない「外出者数」、未届けで不在の「所在不明者数」の合計人数が200人を超えた日があったが、同会は「施設は不便な場所にあり、夜遅くまで仕事や住居を探していた人が多いはず」と主張した。

NIKKEI NET(日経ネット):派遣村の外泊「四十数人程度」 支援団体が反論

毎日(2010/1/13)の記事から引用。↓

都によると7日に施設で夕食の配膳(はいぜん)を受けなかった入所者は201人、11日は140人で、これらの人数は夕食時に施設に不在だったと推定している。ただ、夜間を通してどれほどの人数が施設に戻っているかは把握していないという。

公設派遣村:「200人所在不明」に反論 市民団体「夜戻っている」 - 毎日jp(毎日新聞)

最後にしんぶん赤旗(2010/1/13)の記事から引用。↓

同会が、都の現場担当者に問い合わせたところ200人という数字は都として公式発表したものではなく、実際の外泊者は毎日四十数人程度だといいます。

公設派遣村 「無断外泊」は誤認/ワンストップの会 利用者支援継続を要望 - しんぶん赤旗

これ、全部同じ記者会見を元に書かれた記事なんですよね…。


産経は「最大250人近い所在不明者」と書いてますが、同紙の過去の記事をざっと眺めた感じでは、この数字は『【派遣村】所在不明者約90人戻る 「無断外泊禁止」の張り紙効果? - MSN産経ニュース』という記事で(web上で読める記事としては)初めて出てきたようです。ちょっと引用すると↓

都によると、宿泊先の労働者用臨時宿泊施設「なぎさ寮」(大田区)の入所者名簿は10日午後9時現在、前日から2人退所して546人。一方、同日の夕食配ぜん数は392人分で前日から89食増えた。外出したまま戻らない人は76人、行方不明者は78人となった。

【派遣村】所在不明者約90人戻る 「無断外泊禁止」の張り紙効果? - MSN産経ニュース

とあり、どうも夕食を施設に食べに来なかった人数をそのまま「所在不明」としているっぽい。この記事では「1月10日の午後9時現在」としているようですが、それ以降に帰ってきた人がいたとしても、そのまま所在不明者数にカウントしてるようです。そういう数え方はありなのか、という気はします。しかし、この記事から類推すると、1月9日に夕食を施設で摂らなかった人数は245人程ということなんでしょうか。で、そのうち「本当に」帰って来なかった人は何人なんでしょうかね。
日経や毎日の記事にある「都によると」というのは、両紙がそれぞれ東京都の担当者に取材して得た情報なんでしょうが、内容にズレがあるのが気になりますね。毎日の方が突っ込んで確認したという印象。いずれにしても、多くて「200人強」といったところでしょうか。毎日が正しければ「実数は不明」というのが一番正しそうですけど。(あと、仮に産経の記事から類推した数字が合ってたとして、毎日が1月7日と11日の数字を示して、9日の数字を出さなかったことに何か意図があるのでは、と見る向きもあるかもしれませんね。)
赤旗の記事は、記者会見した市民団体(「年越し派遣村が必要ないワンストップ・サービスをつくる会(ワンストップの会)」)の発表した内容そのままという感じ。「都の現場担当者」というのが誰なのか気になるところですが、「四十数人程度」というのは、毎日や日経の「都によると」という内容ともかけ離れていて、ちょっとどう考えたらいいか分かりません。
東京都の公式発表というのはあるんですかね。関東大震災直後の朝鮮人虐殺事件やら南京大虐殺みたいな論争になったらいやだな、と(という、この例えもどうよ、って感じですね)。


個人的な意見をちょっと書いとくと、人数の多寡はともかく、そりゃ現金を渡したらパッと使っちゃったりどっかに行っちゃう人が出ても当然だろうな、と思います。やり方についてはもうちょっと工夫があっても良かったかと。250人でも40人でも、無視できるほど少ない数字とは言えないと思いますし。
他の人も指摘してるでしょうけど、現金を渡すのは一番簡単な支援方法ですが、同時に一番失敗しやすい方法でもあります。国か都か分かりませんが、施策の担当者に「どうせ短期間のことだから」という甘い見通しがあったのかもしれません。そのことを責めるのも酷かなという気もちょっとしてますが。今後もしばらくはこの手の問題は続くでしょうから、課題として対応策を考えてくださいね、考えましょう、と。*3
それから、緊急避難的に失業者(あるいはホームレスの人など)に対して生活保護をかけるのはやればいいと思うのですが、いずれこの人たちにも社会復帰というか、就労なりの自立や、高齢者ならば何らかの社会との関わりを作っていかないといけないだろうと思います。大きな構造としての雇用の安定がなければどうにもなりませんが、「受ける時のハードルは高いが、自立するのは難しい」とよく言われる生活保護制度のあり方も見直す必要もあるでしょう。
生活保護から自立へのインセンティブをどうするかという問題が一つ。さらに、一般的に高齢者と分類される65歳以上の人で無年金やそれに近い人たちに対する対応も、今の生活保護の枠内での対応でいいのか、という問題もあります。ちょっとここで書ききることは出来ませんが、これから先にはこういう問題も待ってるよな、ということで。

*1:参考→『名古屋越冬闘争、その後・中村区役所での生活保護申請「同行支援」を再開-JanJanニュース』リンク先の記事中に「やはりこの一年、生活保護の同行支援の活動も成果を挙げていて、職と仕事を失ってホームレスとなった人たちの、ある程度の人達には、生活保護や、そのほかの支援が行きとどいており、生活相談にくる人の数自体は、昨年よりは減っているようです。」とある。

*2:参考→『ガバナンス・国を動かす:第1部・政と官/7(その1) 派遣村元村長、思わぬ壁 - 毎日jp(毎日新聞)』『ガバナンス・国を動かす:第1部・政と官/7(その2止) 枠組みの変革にはいたらず - 毎日jp(毎日新聞)』国と地方の駆け引きのくだりとか、「地方分権」のあり方も含めて、いろいろ考える材料にもなりそうです。

*3:少なくとも、交通費に関しては小額のプリペイドカードを必要に応じてその都度支給するという方法も考えられるし、昼食代も一括ではなく毎日支給とか2日に1回の支給にするとか、あるいは都内の飲食店に限った食券にするとか、面倒でしょうがやり方はいろいろあると思います。でなければ、あらかじめ目的外の使途に使われる金額もコストと割り切るか。