いわゆる在日コリアンの人たちに対して「祖国へ帰れ」と言うのはおかしいと思うよ。

なぜか。なるべく簡単に。
関連→『在特会とか「広義の日本人」とか、そこら辺の話。 - 23mmの銃口から飛び出す弾丸は
要するに、今の在日コリアンの人たち、特に1世の人たちはもともと「日本国民」だったわけだ。それを終戦時にいきなり「おまえらはもう日本国民じゃないから」とやっちゃったと。1910年から1945年まで「おまえらは日本国民だからな」と言い聞かせてきて、実際にそのように生活してきた人たちに対して。
35年というと、かなり長い期間だ。その間、日本と朝鮮半島は「一つの国家」ということになっていた。実質は植民地支配だろうし、差別も酷かっただろうとはいえ。一つの国であるからには、当然人は移動する。朝鮮半島出身者が日本の本土で暮らすことは、別に不自然でも何でもない。強制連行だろうが、自分の意思であろうが、本土で生活すること自体をとやかく言われる筋合いは誰にもない。みんな「日本国民」なんだから。
戦後の済州島四・三事件あたりの難を逃れてきた人たちにしても、その時点ではまだ、「あの人たちはもともと日本国民だった」という意識は、多くの人たちに共有されていた感覚だろうし、何よりその当時は講和条約以前で日本はまだ占領下にあった。このときの歴史の流れによっては、朝鮮半島から来た人たちに日本国籍を認める(あるいは選択権を与える)ようなこともありえたかもしれない。そういう微妙な話。
結果としては、日本は国家としてはそういう道を選ばなかったわけだが。まー、沖縄とか台湾とか樺太とか千島とか微妙な話は他にもいくつもあるんだけどね。


で、俺が何を言いたいかというと、在日コリアンの人たちの多くはもともと「日本国民」であった人たちとその子孫なわけだから、彼らが日本にいるのはごく自然なことだし、「祖国へ帰れ」というのはあんまり筋が通らない話ではないかな、と思う。
だからと言って、じゃ、現状のままでいいかというと、そんなことはないわけで。特別永住者という制度も、俺はそんなに変な制度ではないと思うけれど、永久にこれが続いていいとも思わない。どこかで線を引くべき時が来ると思う。


例えば、在日1世の人たちに(今さらではあるけれど)法的に日本国籍があることを確認すれば、血統主義を採用しているこの国の国籍制度においても、その子孫たちもまた日本国籍を有するということになる。現実には、日本と韓国や北朝鮮との二重国籍になってしまうので、どちらかを選択できるようにする。そうなれば、それ以降は特別永住者という制度そのものをなくすことができるかもしれない。(これって、つまり日本という国家による「棄民」を公的に誤りだっと認めるということ。)
あるいは、移民との関連で俺がTwitterでよく言っている「永住者の子孫(のうち日本で生まれた者)には日本国籍を与える」みたいなゆるやかな生地主義に日本が移行し、それを遡って適用できるようにすれば、在日2世以降の世代の人たちは日本国籍を選択できるようにはなる。ま、これはまた別の話ではあるが。


一応断っておくと、俺は「在日コリアンの人たちに日本国籍を与えれば、差別問題は解消できる」と安易に考えているわけではない。もしこれが実現しても差別は依然として残り続けるだろう。でも、歴史に対する一つのけじめとしては検討に値することではないかとは思っている、ということ。
また、在日の人に日本国籍を与えるというと、「同化」を志向しているのではないかと誤解されるかもしれないが、そんなつもりはさらさらない。異質な文化を同じにしようとしても無理だし、それは一番やっちゃいけないこと(日本は何度もそれで失敗してる)。というより、日本も多民族国家であることをきちんと国民全体が受け入れる必要があると思っている。俺は、在日の人たちが韓国にも北朝鮮にも行かず、ずっとこの先も日本に居続けるならば、「韓国系日本人」や「朝鮮系日本人」として生活してほしいと思うし、実態はそういうことなのに、法や制度がそうなっていないことが問題であると感じる。
大雑把な話だけれども、俺はこういう風に考えてますよ、と。