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ホームレスについてのひとりごと。

40代のホームレスなんて、まだ若手だろう、と思う。
それに、3日前にホームレスになった70歳と、10年以上ホームレスやってる60歳じゃ、全然違うしな。
ホームレスの人だっていろいろなんだから、というか、ホームレスという「状態」から、「人間性」とか「人格」を決め付けるのは無理があるだろう。普通に考えて。
さらには、「ホームレスには○○なタイプの人が多い」という事実(それも、個人が観測できる範囲において見聞きしたであろう事実)から、「○○なタイプの人はホームレスになる可能性が高い」と言ってしまうのは、かなり飛躍があるし、注意が必要だ。
そんなものは、「ホームレスには血液型がA型の人が多い」*1ので「血液型がA型の人はホームレスになる可能性が高い」、と言ってるのとそんなに変わらない。
あと、「社会(あるいは国家)のリソースは限られているので、ホームレスやニートの対策に使うよりも先に、労働弱者(ワーキングプア非正規雇用/不安定雇用の人たち)のために使え」というのは、非常に魅惑的な言説ではある。(ファシズムまで、あと一歩だ、頑張れ。)これが、「今は緊急事態だから、国家全体の福祉の分配に優先順位を付けなくてはならない(たとえ、それによって生命が脅かされる人が居たとしても)」と国民の危機感を煽る言説とセットになっていると、もう危険だ。()内が特に重要。トリアージの比喩はここでは避けたいところ。
それから、「ガス室に送れ」というのはジェノサイドを煽るヘイトスピーチとしか思えないのだが、一定数理解を示している人が居る、という事実にはかなり憂鬱になる。大方の人は比喩と受け取っているだろうし、さらにその大部分の人は出来の悪い比喩だと思っているだろう、としても。



ところで、ホームレスの「状態」に至ったのは自己責任か。そりゃ、個々の事例を見れば、かなりの割合で、自己責任だろう。そういう尺度で見れば。日本が戦争に負けたのも自己責任だもんね。自業自得ってやつ。その状態に至るまでの過程で、踏みとどまる事も出来たはずなのに、と。
ただ、もう少し俯瞰で見ればどうだろう。例えば、建設業界なんかは、以前は日雇い労働者を必要としてて、でも、現在は以前ほどは必要ないから、ということで職にあぶれる人たちが出るのは、当然のこと。日雇いの人の多くは、飯場や寮住まい、あるいは安宿に寄宿していて、自分の住宅(持ち家だけじゃなくて、賃貸住宅を含めて)を持たない。そうして仕事にあぶれた人たち、あるいは加齢等により働けなくなった人たちの「一部」が、ホームレス化していくのはある程度必然性がある。
ついでに言うと、日雇いの人たちの背景もいろいろで、単に学歴が低いから、他の仕事が続かないから、という人しか居ない、ということでもない。それなりに大きな企業に長期間勤めた経験がある、という人も居ることは居る。
何が言いたいかというと、個々の自己責任を問うのはそれはそれで結構だけれど、雇用の調整弁として末端の日雇い労働者は利用されてきたという事実があり、そのような構造的な問題も無視できないだろう、ということ。
さらに、現在でも日雇いは、絶対数は少なくなったとは言え、必要とされているし、逆に、製造業やサービス業も非正規雇用が常態となりつつある。この流れは大筋としては変わらないだろうから、雇用の調整弁としての非正規雇用という構造がある限り、ホームレスの問題はなくならないだろう。つまり、今日の正社員が、明日のフリーターになり、明後日の失業者、明々後日のホームレスに転落していく可能性が、「構造」として存在するということ。本人の意思に関わらず、だ。
もちろん、そこへ至る道の途中で、たとえ引き返せなくとも、なんとか踏みとどまる人が大半だろう、とは思う。そういう意味では個人の資質というのは重要ではある。けれど、そこから零れ落ちる人は必ず、存在する。それは、僕かもしれないし、あなたかもしれない。



「構造」をどうにかするには時間が掛かるし、今の状況で非正規雇用の禁止とかしてしまったら、とんでもない惨状になるのは目に見えている。その問題を考えるのは、正直、僕の手に余る。
しかし、この「構造」をそのままに、そこから零れ落ちた人を(ガス室はともかく)社会が切り捨てるならば、というか今までも散々切り捨ててきた訳だが、それはかなり冷酷な仕打ちで、個人の心情としても嫌な社会だと思う。
構造を変えられないのなら、そこで必要なのは、危機感を煽るヘイトスピーチではなくて、対症療法でもいいから対策を練ることだ。そのための知恵をみんなで出し合うことだ。現に、対策はいろいろ講じられている。それでも、ホームレスが減っているようには見えないとしたら、対策を上回る勢いでホームレスが増えているのか、自分の感覚が間違っているかのどちらかだろう。(対策としては、ホームレスになる寸前の人、なったばかりの人も掬い上げるものも当然あるので、街に出て効果を感じられるとは限らないが。)


もう少し、ついでに言っとくと、ほとんどのホームレスは臭くない、というか、臭わない。*2
ほとんどのホームレスは怖くない。
「ほとんど」から外れる一部の人は、たぶん、ホームレス以外の人にも居る「怖い」人と、割合としてはそんなに変わらないのではないだろうか。*3
みんな、ホームレスについて、もっと知って、もっと寛容になればいいのに。


http://d.hatena.ne.jp/kajuntk/20080902/1220341668*4

*1:一応断っとくと、これは、単なる例だからね。でも、日本人で最も多い血液型はA型だそうだから、実際にもそうなってるかもしれない。あくまでも、かもしれない。

*2:つまり、ほとんどのホームレスは風呂に入ってる(体を洗ってる)し、衣類の着替えや洗濯もしている、ということだ。

*3:精神障害などの場合、薬で抑えられない分、症状が顕在化しやすい傾向は、ひょっとしたらあるかもしれない。そういう人に必要なのは、適切な医療であって、排除ではない。それに、一口に精神障害と言っても、病気によって全然違うし、むしろ「健常者」よりもおとなしいのではないか、という話もある。

*4:リンクするの忘れてた。読むと気分が悪くなったり、頭が痛くなるかもしれないので、読まなくてもいいけど。でも、読まないと、このエントリの意味が分からないかもしれない。