昔々、学生時代に

学祭の実行委員会なんてものをやってて、本番が近づいてくると泊まり込みの作業なんかをやることがあって(というか、やらざるを得なくなって)、その時に泊まるのは学生会館っつーサークルの部室なんかが入ってる建物で、そこに猫が一匹住み着いてた。黒い猫で、雌だった(ということが後で分かった)。誰が飼ってるってこともなく、学生たちが気まぐれに餌をやったり、やらなかったり。そのうち責任感を感じた人(あと飼いたいけど、家では飼えない人とか)が、定期的に餌をやるようにはなったけど。
で、作業をやってると、この猫が膝の上に乗っかってきたり、纏わり付いてきたり、じゃれるというかじゃましにきたり。でも、おかげでギスギスした雰囲気が和んだり。ま、みんなに可愛がられてた。
そうこうするうちに、その猫が子猫を産んで。カラフルな子猫たちで、そりゃーかわいかった。どうする?ってなっても、すぐに貰い手がついた。ただ、黒い色の子猫だけは貰い手が付かなくて、結局、学生会館にそのまま居着いて。
すると、今度はその子猫も妊娠&出産。こちらも貰い手はすぐに見つかったと記憶してる。
…って感じで、オチも何もないのだけれど、あの猫たちは、その後どうなったんだろう?
あの時、あの猫たちは誰のものでもなくて、子猫を貰う(あげる)資格も、権利も、実は責任も、誰にもなかった。元々野良猫みたいなもんだったし。そのまま放置しててもよかったっちゃ、よかった。
でも、誰もそうしようとはしなかった。ましてや、殺すなんて。一匹だけ黒いのが残ったときも、それくらいなら、学生会館で面倒見れちゃうなくらいの認識だった。多分、他の人たちも。
考えてみれば、あの猫たち一匹一匹が、全て「その後幸せに暮らしましたとさ」となってる保証なんて何もない。でも、別にそれでいいんじゃない?という気がする。
保証も責任も資格も権利も、生きることや死ぬこととは無関係だ。幸せなのか不幸せなのかも。それでいい。
生きていると、後ろめたさからは逃れられない。開き直ってみても、逃れられない。それでいい、と思う。僕はね。